任意整理とは
任意整理とは、債務者と債権者の間で任意の交渉により、借金の返済額や返済期間などの調整を行うものです。
債権者とは、多くの場合消費者金融や銀行などの金融機関が当てはまります。
現在も多くの債務者が債権者である金融機関との間で任意整理交渉を行っており、多くの場合で債務の減額が成立していると言われています。
ところで、なぜ債権者である金融機関側が自分達に不利益な貸付金の減額や将来利息の免除などに応じるかと言うと、 そこにはお金の貸し借りに関する法律の存在と、その法律の抜け道を利用して来た金融機関が関係しているからです。
法律の抜け道『グレーゾーン金利』
本来、正規の金融業者は、法律の定めた金利の範囲内でしか貸し出し金利を設定することが出来ません。
しかし、その法律に抜け道がありました。
金融業者の貸し出し金利の上限を規制する法律の一つに利息制限法と言う法律があります。
利息制限法には、以下のような貸出金利の上限値が定められています。
- ・元本が100,000円未満の場合 年2割(20%)
- ・元本が100,000円以上1,000,000円未満の場合 年1割8分(18%)
- ・元本が1,000,000円以上の場合 年1割5分(15%)
利息制限法の定める金利を見ると、一番金利が高くなる場合(10万円未満を借りた場合)でも、年利20%が上限です。
ところが、今でこそ大手消費者金融をはじめとした、業者の貸し出し金利は低くなりましたが、一昔前に消費者金融などからお金を借りた経験がある方は分かるとおり、上場しているような大手の消費者金融でも、『貸出金利が25%〜』などというのが当たり前の時代がありました。
何故法律で上限が定められているにも関わらず、上場しているような企業までもが堂々と、上限金利を破って貸し出しをして来たのでしょうか?
そこに法律の盲点がありました。
通常法律では、自動車でスピード違反をしたら罰金を納付することが義務付けられるように、何らかの罰則が存在します。 しかし実は、利息制限法には罰則規定が存在しなかったのです。
そして、お金の貸し出しを規制する法律にはもう一種類『出資法』と言う法律があり、この法律には罰則規定がありました。
出資法の定める上限金利は年利29.2%です。
従って、年利29.2%以下であれば金融業者は罰則を受けることが無いため、事実上自由に貸し出し金利を設定できたのです。
しかしこの29.2%と言う金利は非常に高いもので、多重債務者が多発する原因となり、その結果、悪質でしつこい取立ての増加、借金に悩んで自殺する人の増加、家庭崩壊など、様々なトラブルを生み出すことになりました。
その結果、貸金業者を規制する貸金業法など法律が改正され、最高裁判所でも、利息制限法を超えた利息分の支払いを受けるのは不当と言う判例が示されたことにより、多くの債務者が今まで支払って来た利息は不当なものだった、と言うことになりました。
それぞれ異なる金利の上限をもつ、利息制限法と出資法の金利上限の間で、これまで金融機関が設定して来た金利(20%〜29.2%)は、グレーゾーン金利と呼ばれるようになり、裁判などを通じて取り返すことができるようになりました。
任意整理が成立する仕組み
最高裁の判例が「利息制限法以上の金利取得は不当」としたことで、債務者が裁判を提起すれば消費者金融などは受け取りすぎていた金利分について、払い戻しをしなくてはならなくなりました。
しかし、その都度債務者との間で裁判をしていては、費用が余計にかかることや、多くの時間を要することもあり、債務者が直接消費者金融などに交渉をした場合でも、利息分の返還や減額に応じるようになりました。
しかし消費者金融などは元々お金のプロで、一流の弁護士なども雇い、素人がノコノコと交渉に行っても、あの手この手であしらわれるだけです。
そこで、債務者を助けてくれるのが弁護士や司法書士など、法律の専門家たちです。
債務者は弁護士や司法書士などに消費者金融などとの交渉を委任し、弁護士や司法書士が債務者本人の代わりに消費者金融などと交渉を行い、債務の減額や返還を勝ち取る『任意整理』と言うサービスが登場しました。
任意整理のメリット
一般的に任意整理をすると以下のようなメリットの全部または一部を受けることが出来ます。
- ・借金が減額される
-
これまでに支払った借金を利息制限法の上限金利で引き直し計算し、上限金利を超えて支払った利息分がある場合は、借金元本に充当することで、借入残高を減額することができます。
ただし、グレーゾーン金利が廃止された2010年6月以降に借入を開始した場合は、利息制限法の上限を超えた貸付は正規の貸金業者は行うことが無いため、払い過ぎた利息分も存在せず、借金が減額されることはありません。 - ・業者からの取立てがストップする
-
弁護士や司法書士に任意整理の依頼をすると、各債権者宛に受任通知が送付されます。
受任通知送付後は、債権者から取り立てなどの連絡をしてはならないことになっています。 - ・将来利息の免除
- 仮に、債権者が任意整理に応じない場合、債務者は支払いをすることが出来ずに、自己破産などの法的措置に訴える可能性もあり、そうなると債権者側も貸付元本を確保できない経済的な損失を被る可能性が高くなるため、これまでは多くの債権者が将来利息を免除することに合意してきました。
ただし、グレーゾーン金利の廃止後に借入を開始した場合は、任意整理交渉自体を受け付けない債権者も増えてきたため、その場合は任意整理以外の債務整理を検討する必要があります。 - ・返済計画の見直し
-
多くの債務者が任意整理を思い立つのは、借金の返済が困難だからです。
引き直し計算により借入残高の減額や将来利息の免除を交渉するとともに、無理のある返済計画を見直し、確実に借金を返済できるような支払額や支払期間に是正することが出来ます。 - ・財産を手放さなくても良い
-
任意整理の場合は、自宅や車、その他財産を手放す必要は必ずしもありません。
ただし、クレジットカードで購入して、分割返済している場合や、車のローンが残っている場合などは、返済が完了するまでは物品の所有権はカード会社が保有しているため、そうしたカード会社を相手に任意整理をすると、物品は回収される可能性が高くなります。
しかし、任意整理は、整理の対象にする債権者を自由に選択することが出来るため、そうした財産が関わる債権者とは交渉しなければ、財産を手放す必要はなくなります。
任意整理は、債権者と債務者の「任意の交渉」です。
上で取り上げたメリットは、交渉相手や交渉方法によって拒否されることもあります。
任意整理を成功させるポイントは、「経験豊富な専門家」に依頼することです。
弁護士、または認定司法書士であれば誰でも任意整理を代行することが出来ますが、「交渉結果は誰に頼んでも同じ」というわけではありません。
依頼先を選び間違えてしまうと、最良の結果を得られないばかりか任意整理が失敗することもあり得ます。
どの事務所に依頼するかは事前によく検討しましょう。
できれば複数の事務所に無料相談などを受けて、比較検討してから依頼するとよいでしょう。
また、借金を整理する方法は任意整理だけではありませんので、自身の借入状況に応じて、柔軟に相談に乗ってくれる事務所を探しましょう。
任意整理を専門家に依頼するメリット
- 1.任意整理を依頼後、債権者(消費者金融など)からの催促・取り立てがストップする。
- 2.個人で債権者と交渉するよりも、的確かつ迅速に交渉ができ、和解額も妥当。
- 3.手続きの段取りを専門家が整えてくれるので、債務者側の負担が少なく、知識がなくても安心。
任意整理は私的な債務整理なので、弁護士や司法書士に依頼せずに自分でも行うことができますが、通常は法律知識や経験が乏しいことから、専門家に依頼するのようなメリットは得ることが出来ないでしょう。
また、自分で行うと、交渉が長期化したり、取引履歴の開示請求に迅速に業者側が応じてくれない、など、様々なデメリットがあります。
専門家に任意整理を依頼すると報酬が発生しますが、より確実に債務の整理を行いたい場合は、専門家に相談するのがベストでしょう。
任意整理の費用
任意整理は弁護士や司法書士に依頼することが可能で、おおまかに以下のような費用が発生します。
- 1.着手金
-
0円〜3万円程度(債権者1社当たり)
着手金とは、任意整理を依頼をすると発生する費用で、整理の成功・失敗に関わらず支払う必要がある費用です。
着手金を取らない事務所もありますが、そういった事務所の場合、他の報酬に利益が充当されるケースが多く、着手金以外の内訳が高くなっていることがあります。
また、着手金などが無い代わりに、債務者自身がやらなければならないことが増える場合もありますので、事前に詳しく相談し、必ず依頼先候補を比較検討することをお勧めします。 - 2.成功報酬
-
0〜30%
成功報酬とは、任意整理で債務の減額に成功した場合に支払う報酬です。
報酬は、固定額の場合もありますが、減額に成功した金額に応じて割合で支払うケースが多いようです。
成功報酬を取らない事務所もあり、その場合は、着手金など別の名目で費用を支払うケースが多いようです。
任意整理の報酬や費用は、事務所によっては思わぬ高額になり、借金の整理をしたはずなのに、あまり負担が変わらない場合もあるため、 依頼する前に無料相談などを利用して、自己の債務状況を出来るだけ詳しく伝えた上で、報酬の内訳や割合などをよく確認して、どれくらいの報酬を支払うことになるのかを把握してから依頼するようにしましょう。
良い法律事務所の選び方
任意整理を弁護士・司法書士に依頼する場合、報酬・費用が各事務所によって異なり、また代行してくれる範囲や相談に乗ってくれる範囲も異なります。
債務者本人は、法律には素人であるケースがほとんどですから、できれば専門家に全て任せたいところですが、中には少しでも安く整理したい、と言う人もいるでしょう。
実際の事務所選びでは、まず事務所に相談の電話を掛けて、
・報酬の支払い方
・自分がしなくてはならないこと
・自分の境遇の簡単な説明
などを確認して、実際に担当者と話をして、安心して任せられそうか、自分の希望条件で対応をしてくれそうかを判断しましょう。
※依頼前には債務額が確定しないため、報酬額は確定しませんので、どのような形(割合など)で報酬を支払うのかだけ確認しましょう。
ホームページ上からメールなどで相談を受付けている事務所も多くありますが、債務者本人が質問慣れしていないため、うまく意思の疎通が取れない場合もありますので、電話で相談するのがベストです。