債権者が任意整理に応じる理由
任意整理は債務者と債権者双方にとって、何らかのメリットがある場合にのみ成立します。
債務者として想定されるメリットは、債務額の減額や将来利息の免除です。
ところが債権者にとっては、貸付金の減額など、何らかの妥協をする時点で損失が発生しているも同然です。
それでも債権者が任意整理に応じるのは、債務者に自己破産や特定調停の手続きをされるよりも、任意整理をしてでも少しでも回収できる債権額を多く確保するため、という点に尽きます。
つまり、この『できるだけ多くの債権額を確保するため』という一点にのみ、債権者にとっては任意整理に応じるメリットが存在すると言ってよく、債務者側がこの原理・原則を無視して、無茶な減額要求などをすれば、当然交渉は決裂して任意整理は失敗になります。
任意整理が失敗する例
- ・無職で収入を見込めない人や安定収入のない人
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任意整理では、毎月の返済額や返済期間など、返済計画の見直しも交渉されます。
交渉が成立する前提は、「確実にその返済計画で返済が可能か」という点にあるため、失職中の人や収入の安定性がない人の場合は、新しく建てる返済計画も机上の空論になる可能性が高くなり、交渉が失敗する可能性も高くなります。 - ・任意整理の和解後に、支払いが滞ってしまう場合
- 債権者の立場から見ると、任意整理によって支払額の減額や利息の免除などに応じた時点で、その債務者に対する信用は失われているものと考えられます。 せっかく和解してもらった後に、支払いが滞ってしまえば、多くの債権者は一括弁済を要求してくるでしょう。
- ・利息の支払期間が短い場合
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債権者が避けたいのは、債務者との取引が赤字になることです。
取引期間が数ヶ月ほどなのに任意整理をされてしまうと、利息の支払いはほとんど無く、その少ない利息分も事務手数料などで相殺すると取引は赤字、債権者にとっては「タダで金を貸したも同然」になる事もあるため、取引期間が短い場合は任意整理に応じてもらいにくくなります。 - ・過少申告や債権者を隠す虚偽の申告がある場合
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これは代理人となる弁護士や認定司法書士に相談する際に起こりえる失敗例です。
任意整理では、交渉相手を債務者側が選択することが可能です。
申告したくない債権者や借入額については申告しなくても良い、と勘違いする人がいますが、任意整理の交渉の要でもある、新しく策定する返済計画は、債務者の債務総額や収入、その他月々の支出(生活費など)に応じて、全ての債務全体を毎月いくらずつ返済していくか、また、いくらずつなら確実に返済が出来るか、と言う綿密な計画を建てることで初めて効果を発揮するものです。
弁護士や司法書士が把握していない債務や借入先があると、返済計画の実現が困難になり、和解後に支払いが滞ってしまう大きな要因となります。 - ・支払総額が増えてしまう場合
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弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、報酬や手数料が発生します。
実は依頼先の事務所によっては、こうした報酬が結構な高額になるケースもあり、最終的に支払う金額は任意整理をしないほうが安かった、などということもあり得ます。
基本的に弁護士や司法書士は報酬等や手数料を明示していますが、よく確認や比較をしないと報酬が思わぬ高額になってしまい、首を絞める事にもなるため、事前によく確認しましょう。 - ・保証人がいる場合
- 保証人が設定されている借入がある場合、主債務者が任意整理をすると、債権者側は保証人に弁済を求めるため、保証人がいる債権者との任意整理交渉をする場合は、予め保証人にも相談した上で、一緒に任意整理をしてもらうなどの手順を踏まないと、後々保証人に大変な迷惑をかける事になります。